aiwellは、「aiwell IPA」用いた研究で、癌患者の血液中に新規バイオマーカーを特定に成功しました。今後、資金調達を進め、早期の臨床試験実施と簡易検査法の開発を目指していきます。

■概要
当社は、150名規模の癌患者(癌種非公開)と健常者の血清検体より、aiwell IPAを用いたタンパク質の網羅的解析から、質量分析でタンパク質同定を経て、数種類のバイオマーカー候補のタンパク質を特定に成功しました。さらに、その中には関連する炎症性疾患に反応性が低いマーカーも見出したため、今後は、関係する大学病院などの臨床現場で検証を進め、感度・特異度で従来の腫瘍マーカーをしのぐ検査法開発を目指します。
一般的な腫瘍マーカー検査は血液を採取するだけで行われるため、他の検査(例:内視鏡検査、組織検査)に比べて侵襲性が低いとされていながらも、感度(癌患者を正しく陽性と判定できる率)と特異度(癌でない人を正しく陰性と判定できる率)に課題が指摘されています。近年は自治体や検針期間の健康診断のオプション試験として腫瘍マーカー検査が組み込まれることが増えてきてはいますが、早期のがんを検出する精度はあまり高くなく、現在健康な方が測定するのには推奨されていません。その一方、近年では尿や唾液中の生体物質の測定から早期発見をする検査も開発されてきていますが、血液と比較すると間接的な変化を測定することになり、血液検査以上の性能を期待することは難しいと考えられます。
当社では、調達で得た研究開発資金をもとに入手した150人の血清検体に対して、画像化・AI/IT解析、タンパク質同定までの一連のフローを正味半年という短期間に実施しました。その成果として早期発見が困難であるとされている癌種でのバイオマーカー探索において、従来のプロテオーム解析では見逃されていた腫瘍マーカー候補を複数検出することに成功しました。これらの中には、質量分析(LC-MS)の網羅解析では検出できない翻訳後修飾によるプロテオフォーム(*)も含まれており、当社の高品質2次元電気泳動の特長が実証された結果となりました。対応する臓器における炎症性疾患の患者血清には反応性が低い腫瘍マーカーも確認できており、今後はこれらの腫瘍マーカーの有用性を医療機関との連携の中で検証を進める予定です。
当社では、仮説不要かつプロテオフォームも見分けられる「aiwell IPA」の力により、従来にはなかったタイプの疾患バイオマーカー検査、すなわち感度・特異度を尺度としたスクリーニングを取り入れ、体内環境の微細な変化に鋭敏に反応するタンパク質に着目することで未病状態を検出する次世代検査法の開発を目指します。
*プロテオフォーム;同じ遺伝子由来のタンパク質でありながら、翻訳後修飾の違いで生じる多様な形態を包括的に表すことば